[浮かべた表情には、彼女が残念がる少しの差>>648があるけれど、けれど恐らく、笑顔よりも今の方が珍しい。不意を突かれて──世界が広がったような心地というのは、殆ど味わったことが無かったから。
誠実だとか真っ直ぐ>>647だとか、堅物だとか生真面目だとか、セイルズを表す形容は大半が硬さを示すものだったし、実際かちりと固められてもいたのだ。セイルズは人の機微を解するのが苦手だろうと、叔父が慮ったことによって]
……そう言って貰えると、嬉しいものだな。
[数字の中には体温がない。
堅物がきちりきちりと扱ったなら、業務の中からも温度は削げる。
──仕事の関係でありながら、こうして感謝から人の温もりを感じる>>649ことも、セイルズにとって非常に珍しいことだった]
(688) 2018/11/28(Wed) 23時半頃