――それから〜たくさんの時間の使い方――
[男は元々健康体であった。
単身異国に乗り込んで住み込みで働き自らの能力で稼ぎを得られる程の精神の図太さにも自信があった。
だから本当に自分のいのちが伸びたのだという実感が最初はあまりなかった。
世界の色は変わらなかったし、一日が長くなることもなかった。
早朝に起き、準備運動とジョギングで汗を流す。
シャワーを浴びて、生野菜とトースト、ミルク、フルーツの朝食を摂る。
そこから暫くインプットの時間を取る。
新聞のコラムを書写したり、読書をしたり、レコードを聴いたり。
脳に疲れを感じる頃、今度はコーヒーや紅茶を淹れてゆっくり飲みながら、アオに持って行く土産のことを考える。
男が眷属となれば犬の血は飲まずとも良くなるのだから、主人を奪った罪滅ぼしのようにモモ宛の土産の率も高くなった。]
(661) 2019/10/08(Tue) 00時半頃