[シルクは前に雪の中を転がっていた時より随分と弱々しくなってしまったから、ひょい、と横抱きにして宿を後にした。恥ずかしいなんて文句なんか言わさない。今まで大事に使ってきたリュックも刺繍の道具もジャムの瓶も全部持って、誰もいないところへ行こう。
夜にならない街を抜けて、氷の張った川を渡って……二人で夜空を見上げた場所に来た>>480
吹雪が吹くからと、街の人も滅多に近寄らないらしい。こんなに綺麗なダイアモンドダストも、澄んだ空気の下で見る星空も、寒さに凍えるヒトの前には遠く手の届かないところらしい。
そうして、いつぞや夜を明かした洞穴に辿り着いた。
俺がそばにいるんだから寒くはないかもしれないけれど、その体から体温が失われるのが怖い。
ここは白夜の街ではないから、次第に日が落ちれば夜になる……また星を見れるかどうかはわからないけれど。]**
(635) ヨキ 2016/10/23(Sun) 15時半頃