― 回想・文化祭準備 ―
[文化祭の出し物は演劇に決まった。
役者、衣装、照明、大道具、小道具、脚本、演出、案内、広告。
黒板には、想定される係の名前が並ぶ。
教室内は、何の係をするかの相談の声が飛び交ったり、早速黒板に名前を書きに来る人もいてにぎやかだった。
「楽なのどれー?」なんて、わかりやすい声も聞こえたりする。教室内でもひときわ目立つグループだ。
悪い人たちじゃない。だけど、あたしとは違う世界の人だとなんとなく思ってた。
その頃、まだ吹田さんとしか呼んだことがなかった実瑠ちゃんのことは、もちろん知っていた。
実のところ、高1の頃から彼女のことは知っていた。
放課後や週末、実瑠ちゃんのグループが時々やってきて、長いことおしゃべりしてたファストフード店>>208、そこはあたしのバイト先だったから。
いい匂いのする実瑠ちゃんと、油の臭いを纏うあたし。
カウンターの向こう側とこっち側。
実瑠ちゃんとあたしは、違う世界の住人だと思っていた。]
(610) 2018/02/11(Sun) 18時半頃