[それよりも、だ。
朝比奈の言>>490から、私は、教科書を閉じて、その角を顎に当てた。
先生もいない、電話もつながらない。
それなのに、空調、電気、人の気配はしっかりある、奇妙な校舎。
誰ともなしに語られた、もしもの話>>545に、数年前に読んだ本を思い出す。
孤島の別荘で起こる、まるで、透明人間だか、魔女でもいるかのような、奇妙な殺人事件。
それを論理的に解き明かそうとする主人公の姿勢が、なかなか好みだったっけ。
何にせよ、ここは孤高の別荘でもないし、透明人間だっているわけがない。
どうせ、不運にも、先生と入れ違いになっているとか、そういうことだろう。
馬鹿げた妄想を脳内で一蹴して、私は再び、教科書を広げなおした。
一縷の望み、この奇妙な状況と、日常を繋げてくれるかもしれない時刻。
チャイムの音は、もうすぐそこまで迫っている。*]
(581) 2016/09/14(Wed) 20時半頃