[けれど、一度だけ、たった一度だけ、人間の姿を描いたことがありました。
それは、とあるCDジャケットのイラストを描いた時のことです。
美しい星空と、一人の青年の絵。
吸い込まれそうな夜空に瞬く無数の星の中、たったひとつ、まばゆく輝く星。
背を向けた青年の顔は定かではありませんが、彼の視線は、夜空へと――光り輝く星に向けられていました。
インターネットの世界を経由したのか、或いは、人づてにだったのか。
それを描くことになった経緯は覚えていませんが、
依頼を受けて、曲を聴いて、描きたいと思ったのが、一つの例外だったのです。
多くの星のなか、瞬いた星が、彼の―いや、この曲を聴いた人にとっての道しるべとなりますように。
そんな願いを込めたイラストが、その歌を紡いだ彼に、或いは周囲にどのような評価を受けたのか。
僕はあずかり知りませんでしたが、きっと、悪いものではなかった、と。そう思いたいのです。*]
(548) 2016/06/04(Sat) 22時頃