[独房エリア廊下に彷徨い出た血液の蛭は、ヴェルナーが見かけた時のように無害な存在ではない。
人を――正確に言えばベネディクトと現在同盟を組んでいないブローリン、アイリス、リュケイオン以外の人を見かければ、音もなく忍び寄り、服の裾から忍び込んでその血を吸い出すだろう。
そこまでは通常の蛭と同じだ。
だがこの蛭はもう一つ、吸いだすものがある。人の記憶だ。
吸い出された記憶が無くなったりはしないが、蛭が吸い出した記憶はそのままベネディクトの瞳に映りこむ。
それが楽しい記憶であれ、悲しい記憶であれ、ベネディクトはそれを拒むことはできない。
強度は通常の蛭と同様なので、倒すのは簡単だ。
ただ、倒した場合。蛭が弾けて血液に戻る刹那の時間、倒した人間に記憶のフラッシュバックを起こさせる。
それが楽しい記憶であれ、悲しい記憶であれ、きっと誰もそれを拒めないだろう。**]
(533) 2012/04/14(Sat) 13時半頃