―回想・家庭事情と幼馴染と―
[慶太はあまり感情を表に出す方ではない。冗談で怒るふりをしたりはするけれど、本気で怒ったり泣いたりはほとんどしない。別に、良い子を演じているわけではない、けれど。
父に置いて行かれて寂しかった母も、母に縋りつかれるのが嫌になった兄も、気持ちはわかるから。わかるよ、って、誰かが言うだけで、救われることもあるだろうから。そんな風に、無難に良い顔をする習慣がついてしまった。
自分には、傍にいてくれる幼馴染とその家族がいたから。>>510それで救われた気に、なっていた。
円満な家庭。よその子供にも優しくしてくれる母親。何よりも、仲が良い、両親。
それが全て欺瞞だったと、知ったのは今年だった。
親しくなければ気付かないかもしれない、些細な変化が気になった慶太に、零はそっと教えてくれたのだ。]
(531) 2016/09/14(Wed) 13時頃