[ベッドの端に腰掛け、5年前のように手を伸ばせば、年下の叔父の額に触れる。]
熱は、ねぇよな。
寝てる時くらい顔しかめんな。ばか。
[目を覚ましている時なら、振り払われるだろう。
寝ている時だけは、別だとわかっているから今だけは。
くしゃりとくすんだ金色を掻き混ぜてから、手を離す。
途端に、くぁあと大きな欠伸が零れた。]
俺も一眠りすっかなぁ。
[空いてる隣のベッドをちらりと見やってしばしの逡巡。
いいや面倒くさいし。腰掛けたベッドに、そのままごろんと横になった。
これなら起きた時無視できないだろうし。
今更笑顔でおかえりなんて期待しちゃいないが。バスの中で振り向かなかったことを、ほんのちょびっと根に持ってるだけだ。
誰かが台所を使っているのか、微かに漂う美味しそうな匂いが実家を思わせる。
もう一度大きな欠伸をして瞼を閉じれば、うとうとと微睡みに落ちて行った。]*
(524) 2015/11/22(Sun) 23時半頃