― 回想・道を分かつ日 ―
[自分でも、薄々感づいてはいた。
キルロイと己の素養の差は歴然で――否、どの対魔忍と比べても、素養の無さは明らかで、いずれ組織を追い出される日が来ることは覚悟していた。
しかし、実際はそうならず、己に示されたのは研究者としての道。
他に己に許された場所が無いのならば、返事は決まっている。
それを渋ったのは、ただ、彼の言葉を聞きたかったからだ。]
……僕は、対魔忍にはなれない。
はっきりそう言われた。
その代わり……研究者になれ、と言われた。
そうすることが、人の為になる、って。
[研究者としての道を示された夜、キルロイを自室に呼び出してそう告げた。
己が対魔忍候補として如何に不出来であるか、彼も重々知っているだろう。その上で彼が己に何を求めているのか、それを知りたかった。]
(519) 2016/06/06(Mon) 21時半頃