[>>478ふ、と口元に浮かべた笑みは、前方を向くラルフには見えないだろう。彼の情が己に向けば向くほど、何とも滑稽な気分になる。
ラルフの肩に額を押し付けるように顔を伏せたまま、心地良い揺れに再び眠気が訪れる。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは、>>452>>458傷ついたようなヤナギの様子。
しかし、それでも己の得てきた苦しみに比べれば、ずっと瑣末なものに違いない。
それから、>>480己の言葉に心の一つの揺らぐさまを見せなかったJの様子。
鋼鉄の心は固く閉ざされ、奥を覗けたことは一度もない。
だからこそ、その鋼鉄をどろどろに溶かしてしまいたい。そう願うのはかつての思慕によるものではなく、余興の一つとして。
差し出すもののどれか一つでも、直円の趣味に合えば良い。
そうすればきっと褒めてもらえる。良い子だと言ってもらえる。あの、忘れようもない快楽を与えてくれる。]
…………ありがとう。
[>>478囁いて、ぎゅ、と首に回した腕に力を込める。
――――そう。
こんな茶番でも、直円を楽しませる為の材料の一つになればいい。]
(507) 2016/06/06(Mon) 20時頃