良いか、この壺は東方舶来で、釉薬の使い方から見るに、200年以上前、名のある陶工の作だ。
両の眼を凝らして見よ、そして感じよ! この上品かつ艶やかな白磁! 繊細な青の筆遣い! 壺という大型の作なのに非常に繊細かつ美麗に立っている!
そしてかるく叩けばこの様に甲高い音がするだろう!? これはこの壺が非常に薄くできている事を示すッ!
ああ、童は叩くなよ、力加減の知らない輩に叩かれて砕かれては敵わん。
いいか、大型な壺なのにこれはそのフォルムに一端の破綻もない! その形状だけでも美しいというのに、非常に薄く! 繊細な音を奏でるのだ!
これが名工の作と言わずしてなんとする!?
これだけのもの、私が生きている間に二度作られるかどうか分からない、非常に貴重なものなのだよッ!!
それこそ、私やそこの親父、小童どもの命と比べるべくもないくらいにな!
なあ童? もう一度問うぞ? この類稀にして高貴にして気品溢れる芸術品に対して私が≪呪言≫を行使することに何を憚る事が――
(491) 2014/08/15(Fri) 22時頃