[ただ、イロハの方は確実に根に持っていたので、立ち去ろうかとすら思ったが、店内にほんわりと漂う熱気に辛うじて引き留められた。数分後、目の前に置かれたきつねうどんは普通においしそうだった。黄金色したつゆの中に漂ううどん、油揚げ、白地に薄い赤の縁取りのされたかまぼこ、散らされた小ネギ――] ……おお。[自然にお箸がたんまり入ったいれものの方へと手が伸びた。どんなしがらみも刺さったままの棘も、結局食欲の前には勝てないものなのだ*]
(490) 2019/06/09(Sun) 17時半頃