入るぞー………っと、寝てんのか。
[ベッドの上にその姿を見つけて、目を瞬かせた。>>305
バタンと大きな音を立てて開けたドアを、閉める時は控えめに。
荷物は適当に置いて、ベッドに近づく。
運転で疲れたのだろうか。よく寝ている顔を覗きこめば、5年前を思い出す。
あの時、母から連絡を受けたのは二つ。
ツアーキャンセルするからその代打と。もう一つは、母の弟――つまり叔父の様子を見てきてほしいというもの。
実家に帰ってないと聞いて慌ててマンションに戻れば、ベッドの上でぐったりしている姿を見た時は胆が冷えたのを覚えている。
一時期は着替えを取りに戻る以外放置されていたマンションも、今は常に人が住んでいるだけまだマシだが。
病人を一人置いておけるような場所ではない。
母に迎えにきてもらった車に乗せ、実家のベッドまで運搬をしたのだ。
折り返しかけた電話がひどく慌てていたことも。
熱い身体を車の中でずっと抱えていたことも。
本人には絶対言うなよ、と後で母に言い含めて。]
(488) 2015/11/22(Sun) 22時頃