―大ホール―
[自分のことをおっさんと名乗る男は、それだけで何だか格好良く見える。
さっと振りかざされる招待状に、読めたのはフランクという文字。
顔を近づかされると反射的に一歩引こうとしてしまうが、そこにあるのはテーブルで…
思ったよりも顔が近づき、周囲とは一線を画す酒気が立ち昇る。
たまらず目を閉じてしまい、彼の表情は伺えなかったが、手には冷たいグラスの感触、耳には少しからかうような響きの声が入ってきた。
”名前を聞くときは、まず自分から名乗るもんだ。”
その言葉にハッとする。
あ、まだ名乗ってなかった。]
あ、ご、ごめんなさい。ボクはトニーです。ここには、えっと…
[彼に倣って招待状を見せようとするも、グラスに手がふさがれていることに気付かず、うわっと、床に中身を溢してしまう。]
ごめんなさいごめんなさい。
[そんなように口走り、フランクからのからかいを受けつつ、床をふく為にテーブルを離れる。もしかしたら、近くの使用人の方も手伝ってくれたかもしれない。]
(488) 2014/11/04(Tue) 20時半頃