よくない!
[払った手が予想以上いい音をたてたのにちょっと満足げにしてみせたと思ったら。彼の反省していない言葉(当然だ。だって彼に非はないし。)にはっきりと一言。どうやらこれは彼女の意地の問題らしい。
膝をついた彼に、そのまま回し蹴りでも食らわせてやろうと考えたが、ドレス姿だったのを思い出してすんでのところで堪え、膝をついて立ち上がる。]
因縁なんかじゃなくて――
[アタシの“探しもの"のためには。アタシ自身が倒したかった。そう紡ごうとして開きかけた口の動きがそこで止まる。それとは対照的に顔の赤みはましていって]
――――だっ、誰のことよ!!
[そう、吐き捨てるように呟くのが精一杯だった。だって普段可愛いどころか女の子扱いすらされませんからね彼女。こぶしをぷるぷるさせながら、突っ立っているのが限界のようで。
見せもんじゃねえよ、なんていう男の言葉により一層身を強ばらせる。こんな現場、人に見られてたとか、いますぐ飛び降りたい。その忠告に返された幼い声には聞き覚えがないのが幸いだった。
まさか、知り合いに見られてたなんて知るよしもない。]
(486) 2014/11/04(Tue) 20時頃