─裾野の街:喫茶店から噴水広場─
[初めて口にした紅茶は飴色の波紋を揺らして、芳醇な香りを教えてくれたわ。
舌先に広がるのは、すこしの苦み。
あまいミルクを注げば渦巻く白色をスプーンでかき混ぜたの。
するとまた違う色を見せてくれたダージリン。
お花の模様が入ったティーカップを傾けて、温かい紅茶をいただいたわ]
ホッとする味ね。
ねえ、ヴェスパ。いつもこの紅茶を飲んでいたならもっとお土産に買ってくれてもよかったのに。
[ふぅ、と息を吐けば頬っぺたにかかる息があったかくて、思わず両手をあてて。
その美味しさにすこしだけ唇を尖らせつつも、サクサクのスコーンをフォークに刺していただいたの。
その時は食堂に置いてあったジャムを塗ってみて、あなたにも一口どうぞって差し出してみたわ。
あなた達に必要のない食事でもわたしはいっしょに食べることの楽しさを教えてもらったから、あなたとも分かち合ってみたかったの]*
(484) 2016/10/18(Tue) 22時半頃