―屋敷から離れて・「ヤチグサ車」の中―
……なるほど。とんだものを、俺に仕込んでくれたものです。
もっとも、あなたが何者かは知りませんが、直接の原因があなたでないことは、俺も承知していますけど。
[頭の中に響く声が男の決意を後押しする。
リンダから告げられた時、一つの仮説はできていた。
意思のあるまま変異する存在。それは、恐らく抗原であるウイルスに一定程度対抗できる抗体を保持した人間のことをさしていたのだろう。
しかし変異を続けるであろうウイルスに、いつまでその抗体が対抗できるのか。
その抵抗が止まった時は、恐らく、理性を失った生ける死者へと――――]
仮に、そうなってしまった時は……。
俺が持ちこたえられなかった時は……。
[男はちらりと車内を見渡す。そこにあるのは、スーパーでこっそり隠したリキュールの瓶>>164。
ベネットから受け取ったライター>>164も、己の手の届く範囲にある]
(483) 2011/12/05(Mon) 00時半頃