[夜も次第に更けてきて、眩しいばかりの白銀の世界は夜空の色に照らされる鈍色の世界に生まれ変わる。
俺の力で吹雪を抑えれば、適当な洞穴で二人して満天の星空を見上げて過ごせただろう。]
とっておきの場所、なぁ。
[この先に氷の神様がいた遺跡があるはずだけれど……どうだろう。炎の神様の場所みたいに綺麗な花が咲くようなところでもないし。
練習の刺繍を施す手を止めてうんうん唸る。]
……この辺まで来たこと、あんまり覚えてなくってなぁ。
マリアンヌは遺跡には食べ物は無いって言って行かなかったし、ゾーイはこんなに遠くに来る前に死んじまったし……どうなんだろうな。
[旅の間に覚えている限りの前の少女らの話もちらほら出てきただろう。もちろん三人目のことをとっくに忘れてしまったのも。
ここの辺りの記憶が朧気だけれど……けれど思い付いたように顔を上げて]
(480) ヨキ 2016/10/22(Sat) 22時半頃