これは失礼、しかしながら私はお前の名など知らん。
呼んで欲しい名があるのなら、最初に申告しておくことだな。
ちなみに私の事は≪金言の仁右衛門≫様とでも呼びたまえ。
[立ち止まって検分する――黒い傘、装束。そして背の黒き翅>>418]
ふむ? 枢機卿猊下が何か言ってたな、そう言えば。
[思い出そうと額に手を当てる――思い出す前に衛兵が騒ぎ始めた。]
ああ、そうだ。≪白銀の翅≫だ。
別に忘れていたわけではない、偶々言葉が出なかっただけだ。
しかし、ふうむ。白銀どころか漆黒だな、それは。
まあ良い、お前が≪白銀の翅≫であるかなしか、見定めるのは蛇の君だ。
[道を開けろとの言葉には、にやつくように。]
なあに、この国でこれ見よがしに黒を纏っているのだ。
分かるであろう? それをみて判断するのはお前ではなく、私なのだと。
(429) 2014/08/17(Sun) 23時頃