――回想・五年前――
[>>@21中天に上る月は満月。
影に食われていく少年の前に、人影が降り立った。
新たな獲物をと夜魔は腕を伸ばすが、人影は和傘で振り払う。
腕は即座に霧散して、夜に溶けて消えた]
かわいそうに。この出血では助からないでしょうね。
[ぽつりと、本当に哀れむような声が響く。月の逆光で姿は見えず、ただ瞳孔の細い赤い眼だけが二つ、爛々と輝いている。
脅威を覚えた夜魔が、少年から離れて襲いかかる。
赤い眼が笑うように細められると、虚空から細長い虫のような触手が現れる。
それは長大な身体で影に絡みつく。さらに先端がばっくりと裂けると、食らいついて離さない。
その間に、人影は少年へと近づいた]
……死にたくないですか?
どうなろうとも、生き延びたいですか?
[問う声は、とても優しい*]
(425) 2016/06/06(Mon) 01時頃