[浅くとも喰い千切られたとは一瞥した程度で分かりなどしないが、眉の潜められるのに、痛みのある事は分かる。>>341]
魅せるは君の領分だから自信はないが。
請われたなら、落花狼藉と洒落ようか。
[惹きつけてくれと言われたなら、当然の如く応じる。
たん、僅かに強く地を踏むと、低く構えた。
それでも鞘から刃は抜かないままに一歩を踏みながら、前へ、と跳ぶ。
居合の要領とは云え抜刀するでもないが、一匹の後ろ足目がけて振るえば、少なからず機動を奪う事はできるだろうと。
そのまま、後ろ、先生の方へ向かおうとするもののあれば、振り向きざまに刀を身体ごと水平に円を描くよう回し、もう一度地を蹴って妨害としようとする。]
まさか、二兎追うものはと云うのだから。
何方もなどとは言わないが、然し、
[「何方とも言い難いな」と返す。
吟遊などの真似事か、或いは語り口上か、
詩節の一節を読むような言葉を口にする先生の方を見遣れば、湛えるものを稲妻と変えた刃の二振り。>>343]
(420) 2017/06/12(Mon) 23時半頃