な、無い……っ! キーが、そんな……。
[ただ事ではない様子が伝わってしまったのだろう。
訊ねてきた近くの教師に、蒼白した顔つきで訴えた]
く、車のキーを、なくしてしまったみたいなんです。
あぁ、す、すみません。
[同僚も心配げに、周囲を捜索に手を貸してくれる。
下肢に障害を持つ男にとってあのワゴン車>>209は、かわりの得難い移動手段の1つ。
もちろん、駅員などに伝えれば公共交通機関を使うことも可能ではあるのだが、日常生活上で被る不便さは安く見積もれるものではない。
それゆえ普段は肌身離さぬよう慎重に持ち歩いてきたはずだったのだが……]
こんなこと、初めてです。
信じられない。いったいどうして……。
[普段では考えられないことが発生する>>197。
それがまるで、何か不吉な出来事の前兆のようにも感じ、男は顔を強くしかめた]
(395) 2011/11/30(Wed) 00時半頃