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[折れるように項垂れる。お前の胸倉掴む俺自身の手だか、お前の首筋やら肩だか、どっちに当たるのかわからないが、そこに額を押し当てた。
ここにひとりの人間がいる。蕩けるような笑みと共に、今にも犬になり下がりそうな人間だ。鼓動の音やかましく、不確かな『また』と『明日』に引きずられて生きる人間がいる。そんな人間が当然のように「おまえだけならいいって話でもない」と、いってみせる。当然のように俺の命を心配して。
そんなもの、殺せるわけがないだろう。
「生きている」と思ってしまった相手を。
まるで一蓮托生だとでもいいたげに指>>-613に力を込めたお前を、殺せるわけがない。――俺が死ぬだけならいいのに。
きつい腕の感触>>383は、潮風ごときにかき消せるものではなくて、まだまだ胸を(この心臓ごと、)しめつけてくる。じわりじわりと、昇る熱さの正体を俺は知らない。
しばらく、額を押し当てていた。]
(393) さねきち 2018/10/23(Tue) 23時頃