―午前・生物学教室―
非再生細胞の寿命死を除いて、細胞死には2種類あります。
[男は手元の資料を覗き込む生徒達へ、午前最後の授業を行っていた。
授業はたいてい、前もって準備された資料やスライドを使って行われる。
準備の労力は相当なものだが、板書の難しい体なのだから、致し方のないことだ]
1つは、ネクローシス。
これは細胞のおかれた環境が悪化すること起因する、いわゆる壊死と呼ばれる現象です。
そうですね……たとえば、常温で放置していた生肉が腐ってしまうこと。
これも、細胞が生存していける環境が阻害されることで起こるネクローシスの一種ですね。
[生徒達の間を縫うようにして、車いすで移動しながら読みあげていく。
少々生々しさの伴う実験中と比べると、学生たちの抵抗感こそ少ないかわりに、授業への興味も同様に薄らいでいるように感じる。
居眠りしていた生徒を見つけ、台をこつんと叩いて目覚めさせると、資料の続きを追いかけた]
(386) 2011/11/29(Tue) 22時頃