−悪夢の話−
[真っ白な空間に、一抱えもある水だけが入った水槽が机の上に置いてあった。
俺は、その前に立っていて。空っぽの水槽をなんとなしに見てみる。
そのとき、ぴんと金魚が水槽から飛び出した。
フナに色をつけたみたいな、小さな赤い金魚だ。
空とばかり思っていた水槽は、どうやら金魚が入っていたらしい。
床に落ちた金魚は、ぴちぴちと苦しげにもがいていたので、哀れに思いそれを掌に乗せて水槽へ戻してやる。
すると、空のはずの水槽から今度は二匹金魚が飛び出した。
驚き、慌てて二匹を水槽へ戻してやれば、今度は四匹。
それを戻せば八匹。それを戻せば……
気が付くと、俺は床一面の金魚に囲まれて、必死になって水槽へと戻してやろうとしていた。
何度戻しても被害は広がるばかりで、それでも金魚たちを見捨てることはできずに。
頭の片隅で、初めの金魚を助けなければこんなことにはならなかったのだろうかと、そう思った
それでも俺は、すべて救いたいのだ]
(384) kaisanbutu 2014/02/11(Tue) 21時半頃