[やがて車は夕闇迫るころ、屋敷の近くに到着した。遠目にダンの車、セシルの車、そしてもう一台、恐らく生徒会室にいた生徒たちが乗ってきたであろう車がある。他にももしかしたら乗り捨てられた車があるかもしれない。車の横には数人、人が立っているようにも見えた。
田原は一瞬の逡巡の後、車をあえて屋敷の裏手、他の車や屋敷の入り口から見えない位置に停車した。幸い、あたりに奴らの気配はなさそうだ。]
離れたところですまない。
…もし、クロエさんの言うとおり知性や理性を持った感染者がいるなら、相手も車を使うことができるかもしれない。
ここに俺たちが乗ってきた車があることは、俺とクロエさんしか知らない情報だ。もしクロエさんが危うくなったら、これを使ってくれ。鍵はつけておく。
[念には念を入れた。
一人でも多くの人を救うには、リンダの持つ試薬は大きな武器になる。そのための措置だった。]
それとも、一度屋敷の前につけたほうがいいか?
(384) 2011/12/04(Sun) 20時頃