[元々読書は好きだった。
此方に移り住んでから故郷のストーリーがこの地の言葉でどんな風に綴られるのか気になって読み始めた。
大胆な解釈はなく、かといって機械的に単語を置き換えるつまらなさもない。
文章の癖は限りなく自分好みで、どこか「さびしそう」な雰囲気を感じていた。]
『翻訳家にツテはありますか?
パイプを繋いで貰えるなら、取材を受けても良いですよ。』
[ひとりになったガラス職人に雑誌の取材が来た時、政治家育ちの手腕で"アオ"(この土地の住民はクチキを上手く発音出来ない者が多い)とのコネクションを結ぶことに成功した。
国内で絶版となり手に入れるのが難しくなった児童書を手土産に、薄い青色ガラスに桜の花弁を閉じ込めた栞を添えて。
桜はすぐに散ってしまい、そのままだとすぐ朽ちる。
こうしてガラスで挟んでやれば、花弁は「死なない」のだという蘊蓄は、その後の押し売りの前口上。
長生きの為に君の眷属にして欲しい、と直球で告げた。
直接会った吸血鬼翻訳家は、顔もまさに好みだったから、迷うことなどなかった。]
(381) 2019/10/06(Sun) 23時半頃