― 回想/別館廊下 ―
あら、ごめんなさい。
[ふわりふわり、一人ワルツを踊る様な足取りで歩んでいましたら、殿方と私はぶつかってしまいました。
肩を支えられれば、その感触に何か、一言二言呟きを落としますが、じっと見られている様子に気が付きますと、首を傾げました。
頭の上でお帽子が、かさりと音を立てます。]
……亡霊になりたいから、白く冷たくあろうとしていると
そうお伝えしたら驚かれますか?
[殿方の酒気帯びた唇から零れたお言葉に、私は仮面の下微笑んで、そのようにお答えしました。緩く距離をとります間に、第二王子のご遺体の場所は何処かと問われました。]
ええ、知っております。此方です。
[私は問われた場を知っておりましたし、もしかすればお話をしたい方もそちらにまだ残られているかもしれないと、殿方をエスコートすることに致しました。殿方をエスコートするというのは、なんとも不思議な感覚で、心の裡で密やかに笑んでいたことは内緒です。]
(380) 2011/02/07(Mon) 16時頃