[ふと、自分が生まれたばらのアーチを振り返る。蔓が絡まり、葉が生い茂ったそれも、誰かが置き去りにした記憶なのかと。]
戦ってきた者すべてが訪れるでもないし。
褒美、というやつかもしれぬの。
[記憶を持ち越せないことを、むしろ善しとしている風なルパードの言葉にほっと胸をなで下ろし。美しいと称される景色に目を細める。
たしかに、ここは平和で、静かで、美しい。でも。]
……今だけ、だからではないか?
[ここは確かに美しいが、いつまでも留まるような場所でもない。
勿論、クラリッサのように戦士を迎え、もてなす暮らしも悪くはないだろうが。
温かい風に、ふわりと揺れる髪を抑えながらそんなことを考えていれば、思わぬ問いがルパードからやってきた。]
わらわたちの、その、後……?
…考えたこともなかったわ……。
[戦士を、次の人生へと導く。ただそのことしか頭になかった。そういえばどうなるのだろう。露と消えるのか、再び花となるのか。もしくは――。
結局、その場でかれの好奇を満たすことは叶わず。考えてみる、とだけ告げてノアの元へとスコーンを運びに向かう。]
(368) 2015/12/10(Thu) 21時半頃