……ドライブは、お好きですか。
[話題を切り替え、呟いたのは、そんな何気ないセリフ。
意図的に、この凄惨な状況から意識を遠ざけてもらいたかった]
俺は、けっこう好きでしてね。と言っても、あまり遠出はしないんですが。
この街を巡るのが、日課のように……。
[言いながらも、やはりあまりよい話題ではなかったかもしれないと眉を顰める。
話題にしてしまったこの街自体が、今は見る影もないものと化してしまっているのだから]
す、すみません。いえ、ご両親が車をお持ちでしたら、されることもあるかもと思ったもので。
[楽しい思い出があれば、それを思い出して……などと願い口にしたものの、いつもの「余計なことを付け加える癖」が発揮されてしまっただけだたのかもしれない。
女生徒の感染者の脇を、通り抜ける。ひどく、惨憺たるありさまだ。
まるで群れた感染者達に寄ってたかって食い破られてしまったかのような……。
生徒の名前と顔はしっかり覚えている男でも、彼女が誰であるのかは、結局判別がつかなかった]
―回想・「ヤチグサ車」の中・スーパーへの道筋・了―
(368) 2011/12/04(Sun) 17時半頃