―現在・温室―
[アランと幾許かの対話を交えている頃、ヤニクの気配に気づいて目礼をひとつ。
手許の作業を止める事無く、彼からの耳打ちに意識を委ね、浅く謝意を伝う。
先に口火を切ったのはアランの方であったか。
ヤニクとアラン、相容れぬ二人の諍いの音色は次第に大きくなっていく。
掴み取る未来の選択肢が特殊過ぎた我々に、黒い肌の男の言葉は、痛かった。
何度傷を得ようとも、一筋の鮮血を垂れ流して直ぐに"なかったこと"にしてしまう心を、わざとそうしてきた自分を、思い出してしまう。
瞼を伏せて、静かに呟いた]
止さないか、…諍いは不毛だよ
[互いに相手を理解しようという心地は感じ取れず。
だからこそ、拳をぶつけ合ったのかもしれないが。けれど、ヤニクの眼差しに闘志が、或いは食欲が滲めば、それを制する事はしない
そう、我々に血は、必要なのだから。
少しばかり、自己の裡の何かが悲鳴を上げた――気がしたけれど、ヤニクと共に、つい、とアランへ視線を送る]
(360) 2014/01/31(Fri) 00時半頃