[とびきりの笑顔で答えをくれたゾーイは、その場をくるり、くるりと踊るように一回りし。
そうしてからこちらの周りも一回り>>290。
理解はしているがそれでも疑問はまた生まれるせいで、顔にはまだまだ疑問符が張り付いてしまう。
それを見たゾーイは空気を揺らすようにまた、無邪気な笑い音を響かせる。
首を傾げた少女に何が知りたいと問われ、視線が行ったのは彼女の手の中に袋みたいに摘ままれた釣鐘の花。]
……嗚呼、提灯花。
子供の頃は食べる為に野に摘みに行ったりはしたけど、ここ何年も花を見る事とはとんと縁がなくてね。
白い花を咲かせると聞いた事はあったけど、こういう色合いになるのか。
[訊きたいこととは少し違っていたが、それでもその花が気になっていたのも事実で。
ちょっとした懐かしい記憶を喚起させる名前を聞けば、嬉しいというように笑うゾーイにつられたように、慶三郎の口許にも緩い笑みが浮かんだ。
もっともその笑みは、何でもない事のように告げられた言葉に引き結ばれたのだが。]
(360) 2015/12/08(Tue) 23時半頃