── 街角で ──
[少年と犬がセットになった靴磨きは、鳥渡した街の名物だが、最近ブチ猫と青年のセットが加わったらしい。>>327
そんな噂を耳にしたのはさて、いつだったか。
夏の間、頻繁に使用した白のウイングチップを磨いて貰った後、いつもの様に暖簾に腕押しめいた勧誘を続けていた時だ。]
……おや、…君はどこかで見たような……
ああ、彼が噂の弟子ですかな?
[一瞬の邂逅を思い出すには、再会が唐突過ぎた。
熱心に師匠の手元を見詰める横顔、墨が沁み込んだ指先は、人様の財布に手をかけ、老人を揶揄り、背中を叩くものとは思えず。
控え目な申し出に、目尻に皺を寄せて頷こう。]
は、は。それはそれは、光栄です
私はオスカーの次に靴磨きにはうるさいですからね
……君に小言を言うのを、楽しみにしていますよ
[差し出すチップは、二匹と二人分。向かいに停まるキッチンカーが売るジェラートと同じ額。]**
(354) mumriken 2019/08/12(Mon) 22時頃