[ ワクラバせんせいの右手が乗った瞬間に視えた蒼を 小鳥がこれから飛んでいく空を わたしが記憶して わたしが残したくて だから、せんせの隣で絵を描いているとき わたしはいちども ほんとうの空は見なかった。] もっと高くて、もっと……もっとね、[ うまく言葉にもならない。 目を閉じればありありと浮かぶ空も はやく描いてしまわないと、薄れてしまう気がして せんせの教えてくれる筆使いをじっと見る。 そうそう上手く真似なんてできないけれど 目の前の空に没頭するうち いつのまにか、右手の裏っかわは真っ青だった。]
(351) 2016/10/08(Sat) 14時頃