[きっとそれはありふれた休みの一日だった。
昨夜の酒が抜けきってなくてしんどいとぼやいて、出かけるのも億劫だから家にいようとか。とりとめなく会話を交わしながら、それでも今日も、昨日と一緒で外の天気が良いことに気付いたなら、午睡なんて自堕落はひとまず止めて、のんびりと散歩にでも出かけるだとか。
そんな普通の日。
半年前までは当然のように過ごしていた、事故以降には失われてしまった、そんな、泣きたくなるぐらいありふれた休日。その価値を今の自分は知っていた。
好物を出したら嬉しそうに食べてくれるとか、部屋の掃除をすると立ち上がったはいいが、結局ほとんどやることがなかったとすごすご帰ってくるとか、そんな他愛ない会話ややりとりが、どれだけ貴重なものだったかを理解して噛みしめる。
陸二に乗って一緒に風を切るのも、麗らかな日差しの下でのんびりと歩くのも、幸せでしかなかった。家に帰れば飲み物を注いで、沈黙する黒い液晶を横目にまたゆったりと言葉を交わす。
この穏やかな時間を、もう二度と失いたくはなかった]
(351) 2019/11/10(Sun) 05時半頃