こんなの、
[衝動的に、イーゼルを蹴り倒そうとして。だけど、どうしてもできなかった。
がくりと足の力が抜けて、俺はその場に座り込む。
見ていられなくて目をそらすと、次に視界に飛び込んできたのは、やっぱり、俺の。]
……え。
[こんなのはおかしい。そんなに大きくないとはいえ、美術部にはそれなりの人数がいた。
そいつらの作品がまったくない。視線を動かしても、動かしても、目に飛び込んでくるのは俺の作品ばかりだ。
あれは、大きな賞を獲って、校長から賞状を手渡されたやつ。
あれは、顧問がやたら気に入って、高校に置いていってくれよ、なんて言われたやつ。
あれも、あれも、あれも。
まるで、俺の個展みたいに。]
やめてくれよ……!
[結局俺は、頭を抱えて床にうずくまった。もうそこしか目のやり場がなかった。
ぐわんぐわんと脳が揺れるような感覚がする。誰かの、泣き声が聞こえた。]
(346) 2017/09/18(Mon) 16時頃