[広場を見渡せる己の陣取る席の隣の一席には売約済みの印にリボンを結んだ百合の花を一輪。
百合の花の座る席にはミントを浮かべたアイスティのグラスと、ホイップクリームをたっぷり添えたアップルパイを一切れ、小さなカップに緩めの牛乳プリンと、林檎のジャムを添えた動物型のビスケット。”彼女”の好みは多少心得ているけれど、生まれる前の子供に何を用意していいかなんてわからないから、まぁ、気分だ。
今日の日を指定したのは他でもない己である。
何の日なのかと問われる事があれば、己の試験の日なんだと、笑って答えただろう。
家族に囲まれ面白可笑しくそれなりに幸せにやっていると、彼女に証明する日。
…今日はふたりの命日だった。
さて誰か来てくれるだろうか?
今日が賑やかな一日になることを祈りながら、百合の花が座る席の隣、己の席にゆったりと腰を下ろし、心地よく吹き抜けてゆく新緑の匂いを運ぶ春の風に目を伏せた*]
(342) yahiro 2014/02/11(Tue) 11時半頃