―5月2日夕方 薬屋「三元道士」店内―
夕方の「三元道士」から、マドカは買い物袋を提げて出てきた。夢見心地で店をあとにする。マドカは店の雰囲気にすっかりのまれてしまっていた。この店には初めて来たが、驚いた。異国風の外観の店に入ってみると、そこは赤一色。雨が降り注ぎ灰色に染まった街とは、切り離された世界のように見えた。マドカは気づくとふらふらと吸い込まれるように店内へ入り込んでいた。そこには期待を裏切らず、異国風の店員が佇んでいる。熱に浮かされたようにぼんやりと買い物をしてしまった。自分はちゃんと受け答えができていただろうか。店の中でどんなやりとりをしたか、ふわふわする頭では思い出せない。とりあえず、手に持っている商品を見る限り目的は達成できたようだ。今、自分でも役立てること。疲れ、傷ついた人を助けることだ。まどかは、手に入れたばかりの救急セットを袋の上からなでつけると、浮ついた頭を切り替えれるようにかぶりを振り、止む気配のない雨のなかを傘をさして歩きだすのだった。]
(332) 2013/07/22(Mon) 21時頃