[返ってきたのは、望んでいた肯定>>292。
でも、安心なんて出来なかった。それどころか、甘い声と底知れないような笑みに、思わず背筋にぞくりと寒気が走る。その、笑顔と声は、まるで毒のようで。
――違う。違う、万里は、毒なんかじゃない。アイツと、親父とは、ちがう。]
………そっか、"いる"のか。ごめんな、変なこと聞いて。
[曖昧に苦笑しながら万里に謝ったけど、でも。
心の中では、これっぽっちも、万里の言葉を信じちゃいなかった。
背中から離れた体温が、名残惜しい。
やはりこれは、聞いてはいけないことだったのだろう。
いや、聞いて、真実を知るべきだったのかもしれない、けど。でも、もう一歩追及する勇気は、少なくとも、今はなかった。
それなら、どうして現実に帰りたいと思わないのか。
どうして、幽霊に会いたいなんて思うのか。
聞けることはあったのに、聞かなかった。
聞けば、万里がもっと遠くに離れて行ってしまうような気がしたから。]
(330) 2015/06/24(Wed) 00時頃