― お見舞いへ行こう ―
[あの日以来、あたしはあの男の顔を見ていない。
家にも一度も戻ってない。
今は、学校の近くのマンスリーマンションに、母とふたりで暮らしてる。
弁護士も入って話し合い、とか。
色々やってるみたいだけど、あたしは詳しく教えてもらってない。
ただ、昔のバイト仲間の男の子が襲われた件で警察が動いたって聞いて、そのことは少しほっとした。
あの時は、ストーカーの正体を知らなかったからどうしようもなかったけど、彼が怪我をしたのは間違いなくあたしのせいだから。
ずっとそのことが申し訳なかった。
自分がお金を出してやったものは置いていけ、ってあの男はごねたらしい。
その言い分にも一理あるのかもしれないけど、あたしの私物に関しては断固断った。
あたしの使っていたものを、あの男の手元に残すのは絶対に嫌だった。
捨てようかとも思ったけど物には罪はないし。
使えるものは大事に使うのは貧乏暮らしで染み付いている。
だから、結局あの男からもらっていたお小遣いで買ったものやなんかは今もそのまま使ってる。
だってバイト禁止されてたんだもん。あの家で家族ごっこにつきあったお給料だと思ってほしい。]
(329) takicchi 2018/02/26(Mon) 15時半頃