[Jの口から溢れる呪詛は、その全てが己に向いたものだった。
当然だ。彼をそうさせたのは己だ。魔の力を得た体液で精神を脅かし、狂わせて、己にくぎ付けにした。
それはこの場を逃れる為の方策であったが――或いは独占欲だと、錯覚を起こしそうな。
理性を失ったJに襲われた被害者である己は、ただ逃れようとするばかりで周囲の状況など見ている余裕はない。
背中を床に擦りつけて移動した僅かな距離。
そこから更に息が整うに合わせて腹這いになり、恐怖で力の入らない手足でもがくように壁際まで進んだ。
壁を背に、破かれたシャツの前合わせを片手で合わせて肌を隠すようにしながら、見開いたままの目を何度も瞬いてJを見る。
その身体が動けば、それに合わせてびくりと身体を震わせる。]
…………J、 どうして、……
[問い掛けに答えは返らない。
ただ震えるまま、事の成り行きを見ているしか、出来ない。]
(329) 2016/06/13(Mon) 00時半頃