―5月1日午後8時過ぎ、繁華街の寂れた酒場―
>>322
[誰がだ、と舌打ちと共の悪態を。そんな表情をするくらいならば口に出すなと…顰めた顔も相まって尚の事気に触った。
運ばれてきた料理は見るからに――食欲を殺がれる風合いで。多少の恨めしさを込めた視線を送ってからナイフで切り分けて口へと運ぶ。……不味い、というよりは味がしない。筋張った肉を一苦労の後に飲み下し]
家からは出るなつってるけどあのクソジジイ聞くつもりなんかねぇらしい
猟銃持って牛の番してやがる。家畜は放っておいたら死ぬんだとさ
…………馬鹿なんじゃねぇの?あんた
それともそういうの、わざとやってんのか?
[踏み込みすぎたかと、思う前には転がり出ていた言葉。男の心中はいざしらず酷く踏み躙られたような気持ちになった――祖父母と、そして幼かった自分を。
咄嗟に視線を伏せてエールを一口……口中の苦味と共に決まり悪さも飲み干した。詮ない事なのだと分かってはいる。優しいだけではなかったといった彼――恐らくそれも事実なのだと思う。ただ、触れたその手の全てが幻だった訳ではないと信じたい。その想いが今自分を苛む刺になっているのだとしても、だ]
(329) 2013/07/22(Mon) 20時半頃