[──志乃ちゃん。
あの日、何も聞かずに、落ち着くまでずっと頭を撫でて一緒に帰ってくれたこと。>>0:176
本当に、感謝してもしきれない。
体育の時間に、不意に「千佳子、一緒にやろう」と響いた声を思い出す。>>2:121
グループ活動の類で組む相手がいない時に、いつもの涼しい顔で月詠は声をかけてくれたし、来夏は笑いかけてくれた。
愛らしく弾んだ声と共に、恋が肩を抱き寄せる。撫でてくれる温もりが優しかった。
教室で不意に顔を上げたときに、別所とよく視線がぶつかる。>>74
そのたびに、ひどく慌てながら偶然ですといった空気を装うのが、少しだけおかしかった。
東彩が、自然な素振りで時折、声をかけてくれる。
文化祭の準備中、柏原や七五三たちがノリ良く騒いでいる姿に、いつだって心がほぐれていた。
佐久間から貰った飴玉を口内で転がせば、それはとても甘い。
樫樹くん。──あの日、声をかけてくれて。
そして、物語の続きのないこの世界で、手を差し伸べてくれて、ありがとう。]
(328) 2015/07/12(Sun) 00時頃