古塔、ですか…?
[理由を問いたかったが、言葉の端々は尋ねる隙も与えぬように。そして、断ることもできないように。不安げに母を見れば、母も一緒に招待された。
わかりました、と案内され、古塔まで着けば、それまで案内してきた兵士と別れ、いかにも、訓練されたというような屈強な兵士の前にきただろうか。
どうしたらいいのかと様子を窺えば、強引に腕を掴まれ、中に通される。]
…いたっ…!
[痛みに顔を歪める。何故、こんな乱暴に扱われるのだろうか。一緒に来た母は大丈夫だろうかと、横目で見る前に通された場所には何人か見知った顔があった。
なにがなんだかわからないままだ。]
お母様…?いったい、これはなんなんですか…。
[問いかけたって、母が知るわけがない。ただ、身内がいることが、いまの唯一この得体の知れぬ恐怖を和らげていて。ずっと、母の手を取るか、背中に身を隠すようにしていたかもしれない。言葉も発することもなく。そうすれば、やがて、王子が姿を現した。
次々と紡がれる暴言。目障り、穢れた、家畜。とてもショックだった。顔を伏せて、誤魔化すように手をぎゅっと握る。]
短い余生……?
(327) 2016/01/13(Wed) 21時頃