― 別館:廊下 ―
[替えのグローブを取りに部屋に戻る途中に、何やらカリカリとドアを引っ掻くような音。]
猫でもいるのかしら?
[首を傾いで音のする方向を探ると、どうも角の客室から音が聞こえてくる様子。
思い出るのは異母兄の連れていた黒い犬。
もしや、到着してからずっと犬だけ部屋に閉じ込めて?
ドアの前にしゃがみ、耳をあててみると、匂いで誰かがドアの前に来たのがわかったのだろう、ドアを引っ掻くような音は強くなり、くぅんくぅんと何とも悲しそうな鳴き声。
立ち去ろうにも何だか可愛そうになって立ち去れず、人を呼んでドアを開けてもらうとするりと黒い犬が部屋から出てきた。
しかし、ダンスホールに連れていくわけにもいくまいし――――。
困った、と首を傾いで犬と見つめ合った後に、まずは替えのグローブを探そうと、犬を引き連れ自分の部屋へと入っていった。]
(325) 2011/02/05(Sat) 02時半頃