[>>267 それから少し内緒話でもするように身をかがめて、黒づくめ──乗せた客についての話に、眠そうな瞼を数度瞬き]
ああ。見おぼえてか、知ってますよ。
外から船に乗せてきましたし。
モンドの旦那だったかなあ。
[あっさりした答えを添える。もとよりこの渡し守は客を選ぶことをしない。]
やぁ きりっとした人で。
乗せてる最中に、
ずいぶん話を聞いてもらいましたが。
[見たとおりに、剣呑そうな風情を漂わせてはいたが、最近乗せた彼は、ユージンが一方的に世間話を続けても黙って聞いてくれていた。内心はともあれ。十分船に乗せるに足る客であることに変わりない。
軽薄な小舟の主人は、同道する客と積み荷の詮索をしたことはない。取引に必要なのは船賃と、船と自分を傷つけないこと。まあ、何せ、仕事をえり好みできるほどの豊かさがあるわけでもない。]
(325) 2018/07/24(Tue) 23時頃