[自分以上にあの出来事を怖がっている彼にして良い提案ではなかったかと――。
けれど、状況を見れば横になった方が良いのは明らかだったし、自宅へ…と言ってくれれば玄関先まで行って、帰ったのに]
――そっか。ちょっと待って。
[すぐ目の前に自販機で水を買う。
それを再びしゃがみ込んだ彼の目の前にコトンと置いて]
これくらいは受け取って。それ飲んで、歩ける様なら自分で行きたい所に。
もう、馴れ馴れしくしないしメールも、あれで最後だし…あのことは誰にも話さないから安心して。
けーたん、って呼び名は今更変えると変に思われるから変えないし挨拶くらいは今まで通りするけど。
[あの夏のせめてメールを交わしていた頃くらいには戻りたかったけれど。
そうでなくても友人として、普通に接するくらいは。
だけど、きっと彼は無理だろう。何かほんの小さな事でも思い出せば自分を怖がる相手に、これ以上何かをしても無駄だと。
時間が解決するのを待つにもあれから半年経っている。それでも無理な物はきっと無理だと。
いつまでも待ち続けられるほど、少年も大人ではなかった。
本当は寂しかったけどそれをおくびにも出さずに――]
(325) 2015/04/01(Wed) 22時頃