[付着した紙屑を取ろうとしたその指先が、しずくの小さな顔に触れかけた時──反射的に手を引っ込める。
長い髪、白い頬。明滅するように、脳裏に、ちかちか、と。
急に、息が上手く吸えないような、おかしな気持ちになった。
どくどく、と左胸で鳴るのは、ああ、なんだろう。これ。
その奇妙な一連の動作に、しずくは気付いただろうか。
訝しげな目を向けられたならば、いつものようにへらりと笑っただろう。]
ねー。作業、一段落したしさ。手とか、洗ってこよ?
俺たち、たぶん今、結構すごい格好してる。
紙屑とか、すごいよー。
[ほら、髪とか、顔も。
結局、さりげなくゴミを払うのは諦めて、直接指摘する。
触れることをやめたのは、のりやら紙の繊維やらで、指先が汚れていたせい。
そういうことにして、秋野もまた、水道場へ行こうと立ち上がった*]
(323) 2015/06/19(Fri) 12時頃