[メインストリートを行き交う人を眺め、待つこと暫し。
そういえば最近は掏摸の話を聞かなくなった。捕まったのか、改心したのか知る由はないが。
──己のように、人生に明るい変化があったのならいいと願ってしまうのは、それだけ幸せを感じているから。
空と海の青と雲の白、路面を走る赤に、丘に並ぶオレンジ。
もとより色彩豊かなオリュースの街並みも視界に鮮やかに。]
……いえ、今着いたばかりです
[しかし、彼をフォーカスすれば背景は一瞬でモノクロとなり、
愛しいひとの姿だけ色が乗り、綺羅綺羅と輝いて映る。
咽喉に蓄えていた台詞を口に、満足気に眉を下げ、はしゃぐ両手をそっと握り返す。往来ではやや躊躇するが、其処迄ひた隠しにする程後ろ暗いものはない──と、自然と意識も移りつつあった。
真夏でも、平坦な道でも構わず手を繋いで歩くくらいには。]
(319) mumriken 2019/08/12(Mon) 14時半頃